31.久々の寄騎衆評定のこと

服部半蔵正成:Wikipediaから 話が前後しているので、筆者のメモとして書いておくのだが、年次は慶長2年(1597)、念誓64歳の10月である。旧暦の10月は新暦の11月中旬から12月にかけての時期に当たる。 念誓宅もしくは額田屋には、三河に残留…

30.伊賀と三ツ者と風魔のこと

忍者:ホームページ「観光三重」から 今回は忍者について、である。 安土桃山のころ、盗賊のなかには隠密活動や破壊活動に従事した人々が混ざっていた。いわゆる「忍」であって、カムイがそうであったように、その少なからずは被差別階層の出自であったり戦…

29.五右衛門釜煎り刑死のこと

石川五右衛門と一子五郎市:一陽斎豊国画 念誓が、明年は還暦、と思い定めて昵懇巡りを始めた文禄3年(1594)に時を戻す。その8月24日(グレゴリオ暦10月8日)のこと、京の三条河原で盗賊の一味が処刑された。 権大納言(太政官次官)山科言経は…

28.安土桃山"バブル"のこと

『道外武者 御代の若餅』(部分):歌川芳虎 天下を鳴かないホトトギスに喩えて、 ――信長は「殺してしまえ」、秀吉は「鳴かせてみしょう」、家康は「鳴くまで待とう」 というのは、揶揄混じりに正鵠を突いた歴史批評に思われる。 あるいは餅に喩えて、 ――織…

27.幻の「松平家由緒伝」のこと

辻説法跡:本興寺(鎌倉市大町) 田村甚介に額田屋身代預けのことを伝えたあと、念誓が始めたのは、父親常から聞かされていたことを伝え残すことだった。清と名付けた幼児が成人するころ、間違いなく自分はこの世から去っている、という思いに突き動かされた…

26.「額田屋」の身代預けのこと

この史譚は歴史的事実を踏まえつつ、推測と想像を交えて書いています。 豪商渡邊家の屋敷:重要文化財(山形県関川村) 慶長2年(1597)の正月、おこうが産んだ男児は数えで3歳になった。赤子の死亡率が現代からは想像できないほど高かった。ヨチヨチ…

25.還暦で迎えた若い後妻のこと

鶴松丸は1歳2か月で亡くなった(豊臣鶴松画像:妙心寺蔵) 筆者が想像(妄想)するに、念誓がおこう(於紅)を「お手付き女中」に済ますことなく、後妻に迎えることを決意したのは、文禄3年(1594)の夏ごろではなかったか。おこうの腹に子が出来たこ…

24.神から紅へ、おこうのこと

この史譚は歴史的事実を踏まえつつ、推測と想像を交えて書いています。 『剣客商売』第3シリーズの1場面 現時点での中心人物は松平念誓(清蔵親宅)だが、そろそろ本編の中心人物となるはずの松平清左衛門(親正)が登場する準備をしなければならない。 松…

23.前渡し金は銭50貫文のこと

鎧下着:白平絹地経文日輪仏像模様(東京国立博物館) 念誓がかねてから目を付けていたのは、神部甚介という者である。特段に親しくはないが、市場で顔を合わせれば、時候の挨拶を交わし戯言で笑うぐらいはする。 かつて大草松平家が支配していた大草郷、そ…

22.守護使不入と在地領主のこと

戦国乱世でも守護使不入を堅持した鶴岡八幡宮:鎌倉市 念誓が還暦を前に知己めぐりを始めたのは、古くからの昵懇者にそれとなく今生の別れをしておきたい、という思いからだった。そのうち念誓が考えるようになったのは、 ――あとつぎ。 ということである。 …

21.三河の木綿と俄か分限のこと

綿の実 文禄2年(1593)の秋、ただいま額田屋の店から出た念誓に「土呂の町が商いで賑わっている要因は?」と尋ねれば、 ――それは第一に楽市楽座の制であろう。 という答えが返ってくるに違いない。 ——株座が仕切ることなく、儂のような年寄りが合議し…

20.還暦前の供養と功徳のこと

西尾城 文禄2年(1593)、家康は九州肥前の名護屋城にいる。手代頭の槙六郎左衛門が ――今年はいずれへ。 と問うたのは、茶壺を江戸に送るか名護屋城に詰めている家康の許へか、という意味である。 念誓がやや思案の末に ――どちらにも。 と言ったのは、…

19.土呂の楽市楽座のこと

この史譚は歴史的事実を踏まえつつ、推測と想像を交えて書いています。想像をお楽しみください。 楽市楽座:NHK for School 念誓の下には、世の動きにかかる様ざまな情報が入ってくる。まずは年に1度、茶壷道中で江戸に出た額田屋の者の土産話がある。ある…

18.赤坂陣屋と中泉御殿のこと

中泉御殿跡(御殿遺跡公園:磐田市) 徳川家が関八州に転出したあと、岡崎城には田中久兵衛吉政が5万7400石で入った。田中のほか吉田城は池田輝政が15万2千石、浜松城は堀尾吉晴が12万石、掛川城は山内一豊が5万1千石、駿府城は中村一氏が14万…

17.東海甲信5国の知行割のこと

この史譚は歴史的事実を踏まえつつ、推測と想像を交えて書いています。ご一緒に想像しながらお楽しみください。 織田信雄画像(総見寺蔵) 念誓が「雌伏十年……」と呟いたのは、単なる常套句であって、これより10年のちに起こった関ヶ原合戦を見通していた…

16.貫で流通した永楽銭のこと

筆者から:この史譚は歴史的事実を踏まえつつ、推測と想像を交えて書いています。小説らしからぬ創作ですので、すべてを事実と誤解なきようにお願いします。 銭の貫;市場では97文か98文が「100文」だった 武州江戸に退転する動きが始まり、岡崎城下…

15.代官が幕府官僚の始めのこと

筆者から:この史譚は歴史的事実を踏まえつつ、推測と想像を交えて書いています。小説らしからぬ創作ですので、すべてを事実と誤解なきようにお願いします。 伊奈熊蔵忠次の像(水戸市) この史譚は、藤沢周平さんの時代小説『三屋清左衛門残日録』からスタ…

14.去る者と止まる者のこと

江戸時代の神田上水:水道橋あたり(広重画) 歩くしか交通の手段がなかった時代であるにもかかわらず、天下統一達成に向かう回天は早い。 秀吉が小田原征伐を発令したのは天正17年(1589)の12月、家康が誓書を認めて事実上の嗣子である3男の長丸…

13.秀吉の大名鉢植えのこと

この史譚は歴史的事実を踏まえつつ、推測と想像を交えて書いています。 現在の小田原城(城址公園) 念誓が長澤郷と土呂郷の差配所として使ったのは、土呂陣屋であったろう。長澤城はすでに朽ち果てて陣屋とするのは無理があった。 土呂陣屋は三河一向一揆で…

12.石川与七郎逐電のこと

筆者から:この史譚は歴史的事実を踏まえつつ、推測と想像を交えて書いています。小説らしからぬ創作ですので、すべてを事実と誤解なきようにお願いします。 土呂御坊のあとの一画に土呂陣屋(城)が置かれた:土呂八幡宮 松平清蔵(親宅)改め念誓は、家康…

11.天下布武の後継者のこと

筆者から:この史譚は歴史的事実を踏まえつつ、推測と想像を交えて書いています。小説らしからぬ創作ですので、すべてを事実と誤解なきようにお願いします。 島井宗室に「家康が初花を献じた」と伝える千宗易の手紙 肩衝の茶入「初花」は、織田信長が元亀2…

10.天下の名物「初花」のこと

の筆者から:この史譚は歴史的事実を踏まえつつ、推測と想像を交えて書いています。小説らしからぬ創作ですので、すべてを事実と誤解なきようにお願いします。 肩衝茶入「初花」(重要文化財) 宗忠に始まる右馬允家の直系は、弥三郎宗忠―清四郎親常(ちかつ…

9.大義名分と義理仁義のこと

筆者から:この史譚は歴史的事実を踏まえつつ、推測と想像を交えて書いています。小説らしからぬ創作ですので、すべてを事実と誤解なきようにお願いします。 応仁の乱:真如堂縁起絵巻 松平郷の有徳人太郎左衛門の家に入った時宗の出家「徳阿弥」と岩津家初…

8.家督をめぐる下克上のこと

筆者から:この史譚は歴史的事実を踏まえつつ、推測と想像を交えて書いています。小説らしからぬ創作ですので、一緒に想像しながらお楽しみください。 松平郷園地(松平町)に建つ松平親氏の像 武家とは何であるか。 平たく言い換えれば、「武闘を生業とする…

7.信光に傚った弥三郎のこと

筆者から:この史譚は歴史的事実を踏まえつつ、推測と想像を交えて書いています。小説らしからぬ創作ですので、すべてを事実と誤解なきようにお願いします。 伝「松平宗忠公墓」(浄願寺) 寛永19年(1642)に行われた幕府勘定方の機構改革について、…

6.代官の俸禄と勘定方のこと

筆者から:この史譚は歴史的事実を踏まえつつ、推測と想像を交えて書いています。小説らしからぬ創作ですので、すべてを事実と誤解なきようにお願いします。 寛政重修諸家譜 松平清左衛門については、徳川将軍家の家臣について出自や来歴を記した『寛政重修…

5.50を超す松平家のこと

筆者から:この史譚は歴史的事実を踏まえつつ、推測と想像を交えて書いています。小説らしからぬ創作ですので、すべてを事実と誤解なきようにお願いします。 「松平氏発地跡」の碑(愛知県松平町) 信広と信光のどちらが兄、どちらが弟だったかはさておき、…

4.江戸幕府主導の偽作のこと

筆者から:この史譚は歴史的事実を踏まえつつ、推測と想像を交えて書いています。小説らしからぬ創作ですので、すべてを事実と誤解なきようにお願いします。 戸隠神社(長野県)の松柱神事 本稿の主題は幕府の代官として出羽國に派遣された松平清左衛門につ…

3.下敷き「長門守一件」のこと

筆者から:この史譚は歴史的事実を踏まえつつ、推測と想像を交えて書いています。小説らしからぬ創作ですので、すべてを事実と誤解なきようにお願いします。 酒井長門守ゆかりの五輪塔と六地蔵(藤沢市遊行寺) 藤沢さんがなぜ、全国に800人ほどしかいな…

2.三屋清左衛門出自のこと

筆者から:この史譚は歴史的事実を踏まえつつ、推測と想像を交えて書いています。小説らしからぬ創作ですので、すべてを事実と誤解なきようにお願いします。 井上ひさしさんが描いた「海坂」城下の地図 藤沢さんの「海坂もの」は根強い人気があって、諸作品…

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